Sustainability
Lemnos Sustainability 02
魂を吹き込む -レムノスの金属製品への想い-
タカタレムノスの商品には、金属製のものが多くあります。金属の種類や加工方法によって富山、新潟など異なる産地の協力工場にて加工を行っております。
この記事では、その1つであり、グループ会社の高田製作所との取り組みをご紹介いたします。高田製作所は、銅合金やアルミ合金といった非鉄金属の鋳造成形および仕上げ加工を行っています。鋳造とは、製品の形状の空洞が出来た砂型に溶融した金属を流し込み成形する手法です。砂型は、鋳造用に配合した特別な砂を押し固めて作ります。その砂の種類や配合は、工場によって異なるので、その工場の個性が現れます。
砂型を押し固める作業
ある程度の肉厚のある金属製品を成形する場合、主に2つの方法があります。1つは金属の塊から削り出す手法で、もう1つは型に溶解した金属を流し込む鋳造になります。製品の形状により、お互いに向き不向きがあります。例えば、お椀状のものを製造する場合、塊から削り出すと切削に多大な時間がかかり、かつ材料に無駄が出てしまいます。一方、鋳造であれば、最小限の切削で済み、加工時間を大幅に短縮でき、材料を無駄にすることがありません。理論的には良いこと尽くしなのですが、実際は金属の注型時に砂を巻込んだり、空気が抜けず微細な穴が開いてしまったりと不良が起きやすいため、切削加工よりも高度な技術とノウハウが求められます。
砂型を形成するための雄型。円盤の周りに貼付しているものは湯道になり、この湯道の付け方に技術が求められます。鋳造後、色付けなどの行い完成品となります。
商品:Quint / 斑紋ガス青銅色(AZ15-06 GN)
溶解した黄銅を砂型に流し込む
青銅と呼ばれる銅合金を鋳込んで製作した時計。色付けを行っておらず、金属本来の素材感を堪能いただけます。
高田製作所が製造する金属製商品には、塗装などのコーティングをかけていないものが多くあります。その根底には、金属本来のもつ素材感を楽しんでいただきたいという考えの他に、製品を磨き直すことでいつまでも永く使い続けてほしい、という想いがあります。
では、なぜ高田製作所が磨くことを大切にしているかと言いますと、創業時より現在まで、東本願寺で知られる浄土真宗・真宗大谷派向けの仏具の製造をしており、その仏具の特徴が塗装などの色付けをいっさい行わず、鏡面に磨かれた金属素地を見せるというものになっているためです。高田製作所はこの想いを受け、コーティングをかけていない商品を多く展開しています。しかし、色付けを行わないと金属は酸化などの化学反応により表面が黒ずんでしまいます。仏具の場合、黒ずんだものは磨き直して出来上がりの状態にまで戻し、これを繰り返すことで、代を超えて永く使われます。このように仏具を長く製造してきた経験から、レムノスでも、金属商品は磨き直してできる限り永く使いづけていただきたい、との考えからアイスクリームスプーンなどの対象商品に磨き直しサービスを提供させていただいております。
バフというシンプルな道具を用い、1つ1つ職人が手作業で研磨します。
磨き直しビフォーアフター。白サビや擦り傷が入ってしまったものの磨き直しの相談が多いです。
商品:15.0%アイスクリームスプーン / No.01 バニラ(JT11G-11)
現在では、電解研磨という薬品を用いた方法や、バレル研磨という自動研磨方法がありますが、高田製作所では多くの商品をバフと呼ばれるフェルトや綿を束ねた円盤を回転させたシンプルな機械を用いて職人が1つ1つ手作業で研磨しています。(バフとは牛やシカの揉み皮を指す英語で、昔はこの皮を用いて金属が磨かれていたことから、その名残で研磨用円盤がバフと呼ばれています)なぜ手作業で行うことにこだわっているかと言いますと、曲面のある商品を磨く場合、手で面の感触を確かめながら作業を行わないと形が崩れてしまい、その形崩れを防ぐためです。金属は木材などと比べると表面が硬く、磨くためには大きな力を必要とします。研磨作業中に気を抜くと製品が勢いよく飛んでいくこともあり、体を強い力で巻き込まれて大けがをしてしまうため、この作業には高い技術と集中力が求められます。
真宗大谷派向けの仏具。細かい装飾が施された部分にも磨きが入っています。
この研磨の加工は、無垢の金属塊に生気を与えていくような作業であり、仏師が彫刻刀で仏像に命を吹き込んで行く作業と通じるものがあります。是非、高田製作所の高度な鋳造技術を用いて、一つ一つ丁寧に磨き上げられたレムノスの金属製品を手に取っていただきますと幸いです。
また、傷ついたり、腐食してしまった商品は一度、リペアサービスのご相談いただければと思います。
研磨など仕上げ加工を行う工場。