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Story Vol.30

レムノスとして初めて取り組んだカッコー時計、「CUCU」

レムノスとして初めて取り組んだカッコー時計、「CUCU」。発売から15年以上に渡り作り続けられ、現在も定番モデルとして選ばれています。開発当時の試作品を大事に使い続けているデザイナーの奈良さんに、この時計への想いをお話いただきました。

[文:奈良 雄一]

最初の一台を、いまも使い続けている理由

CUCUは、レムノスとして初めて取り組んだカッコー時計です。私自身が使っているCUCUは、量産品ではなく、高岡で鋳造用の木型を手がける木型職人・花野さんに当時製作していただいた、最初の試作品でした。

発売前から手元にあったその一台を、私はそのまま自宅で使い続けています。気がつけば15年以上。途中、機械の修理を一度、木部のわずかな変形による修理を一度行いましたが、それ以外は特別なことをすることなく、いまも変わらず時を告げています。

最初の試作品

デザインした本人が、同じ時計を、住む場所を変えながらも、修理を重ねて使い続けている。これは結果論ではありますが、CUCUという時計の性格を、最も端的に表している事実なのかもしれません。

 

形を決めすぎないデザイン

CUCUをデザインするとき、強く意識していたのは「完成させすぎないこと」でした。伝統的なカッコー時計の要素は残しつつ、日本の住空間に置いたときに浮かない輪郭に抑える。形で語りすぎず、空間に余白を残すことを大切にしています。

試作品として生まれ、暮らしの中へ

素材は、開発当初はタモ材を使用していました。緻密な木目と、どこか温かみのある色味を持つ魅力的な素材です。ただ、量産性や効率だけでなく、修理や調整が可能であることも、最初から前提にしていました。

私が使っている試作品も、木の動きによって一度手を入れています。それは「壊れた」という感覚ではなく、木でつくった道具として、ごく自然な出来事だったと捉えています。

無垢材は、湿度や環境の変化によって動きます。だからこそ、直せる構造であることが重要だと考えています。使い捨てではなく、時間をかけて付き合っていけること。それが、形をできるだけシンプルに保った理由でもあります。

その後、当初使用していたタモ材が安定して手に入りにくくなったこともあり、現在は国産のクリ材へと素材を見直しました。派手さはありませんが、はっきりとした木目と落ち着いた色調を持ち、使い込むほどに深みが増していく素材です。日本の住空間に多い木や左官の素材とも相性がよく、CUCUの佇まいを、より自然なものにしてくれています。

国産クリ材のCUCU

 

使い続けられる時計として

CUCUは、掛けても置いても使える設計です。壁に固定される「時計」ではなく、住まいの変化に合わせて居場所を変えられる道具でありたい、という考えがその背景にあります。

明暗センサーや音量調整など、現代の生活に必要な機能も備えています。ただし、それらを前面に押し出すことはしませんでした。主役は機能ではなく、暮らしの中で鳴ることそのものだからです。

不思議なことに、15年以上自宅で鳴り続けていますが、邪魔だと感じたことは一度もありません。むしろ、生活の中に一定のリズムを与えてくれる存在になっていると感じています。

カッコー時計がくれた、暮らしのリズム

そして、もうひとつ大切にしているのが、修理ができることです。時計の機械も、木の部分も、必要があれば手を入れられる。実際に私自身が修理を重ねながら使い続けていることが、その証明になっています。長く使え、アフターケアも備えているという考え方は、レムノスのものづくりの姿勢そのものでもあります。

CUCUは、特別な時計ではありません。
修理ができ、置き場所を変えながら、暮らしの変化に寄り添い、時間とともに価値を育てていくカッコー時計です。

 

CUCU(NY25-08 NT,CHA)
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Yuichi Nara

1977年東京生まれ。1999年横浜国立大学建設学科卒業。2000年渡伊。ヴェネツィアでガラス工房、建築事務所勤務を経てデザイン活動を始める。2006年ヴェネツィア建築大学卒業。旅行で訪れた能登の自然と生活の豊かさに触れて帰国を決意。能登島に移住する。2007年能登デザイン室を設立。ローカルな素材や技術を学んで活かし、日々の暮らしを豊かにするデザインを心がけている。デザイン活動の傍ら不耕起地の田圃を借りて米づくりも行なっている。

http://www.notodesign.jp/