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Story Vol.7

モケイ的モノ作り CARVED【第2回】

前回からお話ししている、壁掛け時計「CARVED」。単純に文字盤のグラフィックにこだわるのではなく、時計の背景に存在する壁を意識して、どんな壁ともバランスが取れる「質感」をテーマにしました。そこで最適な素材として思いついたのが、通常インテリアの装飾材として使われる「無機質系人造木材」でした。

「Mac People」誌 2013年5月号
「モケイ的モノ作り4-2」掲載記事 
[デザイン・文:寺田 尚樹]

作業効率を意識して
ドリル一本で削り出し

「無機質系人造木材」は石膏のような風合いながら非常に軽く、加工しやすいのが特徴です。重いと事故につながりかねませんし、加工性のよさからコストも抑えられます。こういった点が壁掛け時計として最適だと思いました。

この素材で、早速デザインに取りかかります。今回のテーマは「質感」なので、無機質系人造木材に最もふさわしい加工方法で素直に表現できるデザインにすべきだと考えました。

通常、この素材を工事現場で使うときは、工場で基本的な加工を済ませてしまい、現場では取り付けのみという施工手順がほとんどです。そのためデザイン画を工場にデータ入稿し、それをもとにNC(ヌーメリカル・コントロール・マシニング)という切削機械で削り出します。回転するドリルの刃が、コンピューターから入力された数値に従ってデザイン画の形状をなぞるように動くのです。

入稿するデータの種類はざまざまですが、3Dデータを入稿してそのまま工場で使ってもらう場合と、「Adobe Illustrator」などで2Dの図面を入稿し、工場側で切削機械用に変換してもらうこともあります。この時計は、後者の方法で進めました。

いちばんに考えたのは、回転するドリルの刃先で形状を削り出すという条件で何ができるか、ということ。
そこで、NCで板材から文字盤の指標を切り出す際に、すべて1本のドリルで済ませることにしました。
違う大きさのドリルを何種類も使うとそのぶん生産効率が下がりますし、細いドリルだと頻繁に折れてしまうなど、あまり都合よく進みません。

今回は最も効率のよい直径5ミリのドリル刃を使い、角を半円に丸め、それだけで文字が彫り込めるような書体デザインにしました。
文字の太さも5ミリです。こうすることで、ドリルの刃が切削する長さや時間を最小限に抑えられます。


こうして文字盤のデザインの方向性を決めたのですが、文字盤の大きさに対する文字のバランスや縦横比、彫り込みの深さなど、検討する項目は無限にありました。シンプルで単純な文字盤だからこそ、ちょっとした大きさや形状の変化でバランス感が大きく変わってきてしまいます。この作業には慎重に長い時間をかけました。

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Naoki Terada

建築家・デザイナー
明治大学工学部建築学科卒業後、オーストラリアでの実務を経て渡英。1994年英国建築家協会建築学校(Architectural Association School of Architecture)修了。帰国後、テラダデザイン一級建築士事務所を設立し、建築、インテリア、プロダクトなど多岐に活動。また、2018年より24年まで株式会社インターオフィスの代表取締役社長CEOを務めた。グッドデザイン賞など受賞歴多数。グッドデザイン賞(日)、iFデザイン賞(独)、DFAデザイン賞(香港)審査委員。著書:『紙でつくる1/100の世界 テラダモケイの楽しみ方』『紙でつくる1/100の物語 テラダモケイ完全読本』(共にグラフィック社刊)、『モダンファニチャーヒストリー』(青幻舎刊)
武蔵野美術大学教授、東京工科大学客員教授、多摩美術大学非常勤講師。
タカタレムノスでは「15.0%アイスクリームスプーン」のブランドディレクション、デザインを手がけている。

https://www.teradadesign.com/
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https://naokiterada.com/