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Story

Story Vol.31

丸、三角、四角 指標の時計

「数字を記号だけで構成してみる」という発想から生まれた時計「M,S,S.」。丸、三角、四角という最小限の要素から広がるユニークなアイディアのプロセスとデザインへの想いをデザイナー・大木陽平氏にお話しいただきました。


Q: M,S,S.のデザインはどのように発想されていったのでしょうか

レムノスさんには数年前から定期的にデザイン提案をおこなっていて、複数のデザインを出してみては良いものを試作してみて、商品化の検討をするという工程を繰り返しています。
その中で、定番の時計枠に対して、印刷と塗装での新しい表現を試してみる流れがあり、形になったのがこの時計です。盤面や針、塗装に特殊な加工を盛り込むこともできますが、この時は、シンプルにグラフィックの魅力を主とした時計を作ろうと考えました。その提案のひとつが「数字を記号だけで構成してみる」という案でした。自分自身でよく試みるアイディア展開の手法で「記号に置き換える・記号化してみる」があり、そこから生まれたものです。

「1」「11」「10」は四角で表せるので簡単です。「8」も同様に丸2つで表せたのですぐできました。
「6」「9」は対の形なので1種類でOKで、丸と四角でできました。この応用で「5」「2」も完成です。そうすると「12」もできる。残りは「3」「4」「7」。で「7」を三角で表せることに気づき、割り切れば「7」をひっくり返すと「4」になる。ここまでは順調に辿り着きました。
最後に悩んだのは「3」。三角を2つ重ねる案と、棒を3つ並べた案とを比べた結果、現在の指標となりました。そうして全体の法則が出来たのちに、細かな調整を重ねて完成しました。仕組みづくりは結構好きなことなんです。


思いのほかスムーズにできたこと、変形させてない丸・三角・四角(Maru,Sankaku,Shikakuという商品名にもなりました。)だけの記号、反転を用いた少ない要素で組み立てられたことから、良いものにできたかなと思います。「4」は思い切って右下の形状を省いて三角だけなのですが、位置も含めて「4」に見えることは、改めて興味深く感じますね。


Q: M,S,S.は、アルミ枠から、ひとまわり小さな樹脂枠でのリニューアル発売となりました。

最初に発売された直径200mmのイメージは「シックな中にある可愛げ」を狙っていました。(当初のカラーリングのピンクは白へ変更となり、よりその印象は強まりました)
ただ、佇まいと価格のバランスなのか、商品の魅力として伝わりきらなかったようでした。
そうした状況もあり、直径200mmから直径150mmへの枠形変更の提案をいただいたとき、サイズも小さく価格も安くなることから、可愛げな部分を強調し、よりポップな存在感を目指しました。
カラーバリエーションについても、多くの案の中から個人的な好みや、新鮮さを感じるもの、安定的に受け入れてもらえそうなものを選んでいった結果、引き継いだ黒+アイスクリームのような3色がラインナップとなりました。加えてMoMAさんの別注カラーも生まれて、そちらも好評をいただいております。
発売後の反応を比較してみると、150mmの方が明らかに好評であると感じます。
同じアイディアでも、色や大きさによって印象は変わりますし、佇まいと価格においても、明言はされないけれど受け入れられる境界線があると感じます。

当たり前ではあるのですが、こうして目の当たりにすると、「商品」のデザインにおいての全ての要素の重要性を痛感します。M,S,S.のデザインの魅力を信じてくれて、市場に再提案する機会をいただき、それで結果を出せたことは嬉しいことですね。


MoMA 特注カラー

MoMA Tokyo

MoMA New York


Q: デザインの中で大切にしていることをおしえてください。

デザインをすることで、人や世の中のために役に立てればと思っています。製品であっても商品であっても、使っていただく方に喜んでもらいたいですし、一緒になって作ってくれた方、そして売ってくれた方々と利益を分かち合いたいです。魅力の伝達や情報の整理など、グラフィックを使ったデザインをする場合でも、同じように役立てることを大切にしています。そうしたケースが積み重なって、社会課題になるような大きなことにも影響を及ぼせないか。そんなことを考えています。

上記は「デザイン」を通じて実現したいことですが、アウトプットについては「バランス」を考えることが多いです。造形や配色はもちろん、カラーバリエーション、ラインナップの構成、製造工程や歩留まり、コスト、価格、継続性…ひとつのデザインでも、多くの外的な要素が関係します。できるだけそれらに対しての選択肢を持ち、比較検討をできるようにし、ベストを導きだせるように臨んでいます。
ひとことに「バランス」といっても均衡を保たせることだけが目的ではなく、振り切る・崩すということもやはりバランスです。すべてにおいて、どういうバランスを取っていくのか?といったことを大切にしています。

そうした背景もあり、次はレムノスさんのプロダクトで、今まであまり無かった雰囲気や配色の時計をつくっています(それもまたバランスです)。時代性や市場の反応、過去や未来のことなど、コミュニケーションを重ねていくと、新しいアイディアの種が見つかります。その種をふくらませる試行錯誤を、一緒になって繰り返しています。

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Yohei Oki

1984年東京生まれ。阿佐ヶ谷美術専門学校スペースデザイン科卒業。デザインオフィスnendoで経験を積み、idとして活動した後、2019年に『side』を設立。平面から立体までカテゴリーを問わずデザインを手がけている。受賞歴にはデザインプラス賞、レッドドットデザインアワード(ともにドイツ)などがある。

http://side-inc.jp