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Story Vol.9

時計台の時計 – エピソード- 1

プロダクトデザイナー、小池和也さんに時計のもつ機能や実際にデザインを模索していくうえで、こだわり抜いた細部について語っていただきました。どんなインテリアにも違和感なく自然と溶け込む時計の魅力が凝縮された貴重なお話です。

時計台の時計について

「時計台の時計 - エピソード- 1 」
[デザイン・文: 小池和也]

2014年にLemnosから発売された「時計台の時計」について書かせて頂きます。僕は普段、プロダクトデザイナーとして活動していて、主に生活雑貨、インテリア用品、家電など、日用品のデザインをしています。また、デザインだけに留まらない関わりで、ブランド全体のコンセプトメイキングから始まるブランディングや、リリース以降も携わっていくディレクション業務もさせて頂いております。

これまで様々なインテリア用品のデザインをさせて頂いてきましたが、Lemnosとの取り組みは前者。プロジェクトは2013年から始まり、時計という分野は初めてでしたので、このチャレンジは僕にとってとてもやり甲斐のあるものでした。

時計が持つ2つの機能

今回の時計のデザインをするにあたり、時計の「機能」について考えました。
インテリアプロダクトには2つの機能を持っていると思います。

一つは実用的な目的を達成してくれる機能、もう一つは心を満足にしてくれる機能。その両方が機能として備わっていないと価値があるとは言えません。時計で言うと実用的な機能とはもちろん時間が明確に分かること。
もう一つの機能は、インテリア・生活空間での存在感。椅子であっても、照明であっても、統一感を重視するのか、遊びを取り入れるのか、インテリア選びの楽しみ方は人それぞれです。

2つ目の機能については、時計もインテリアを左右する重要なピースですが、インテリアの主役とは考えていません。本当に良いプロダクトは気付かれないと言います。使っている時に何か気付くという事は、そのものに違和感があるからです。この時計は一見、モノトーンのクールな印象を与えますが、実はどんなインテリアでも違和感なく自然と溶け込み、むしろ温かい空間の方によく馴染みます。

そういったプロダクトを目指して、細かな修正を加えながら、空間に溶け込むデザインを模索してきました。

時計台の時計という名前も、最初に時計台のようなスタイルの時計を作ろうと思ったわけではなく、どんな時計が部屋にあってほしいかと模索していく中で、街の中での時計台のような存在の掛け時計を作りたいと思ったから付けた名前です。




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Kazuya Koike

1980年大阪府出身。2003年からデザイン会社に勤務。チーフデザイナーとして顧問クライアントのデザイン、自社製品のデザイン及び開発に携わる。2012年 Doogdesign. 設立。現在 日用品、ステーショナリー、家具、家電などの工業デザインを中心に、企業や地場産業のブランド開発、クリエイティブディレクションなど、国内外のプロジェクトに携わっている。
受賞歴 Good Design Award、iF Design Award、Taiwan Excellence Award 等