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Story Vol.10

時計台の時計 – エピソード- 2

プロダクトデザイナー、小池和也さんに「時計台の時計」製作時のオリジナル書体のデザインについて語っていただきました。

オリジナル書体の                                                        
デザイン

「時計台の時計 - エピソード- 2 」
[デザイン・文: 小池和也]

はじめに、オリジナル書体のデザイン。「時計台の時計」の書体は、枠のデザインに合うように等幅の線を基調としています。

一見同じ幅に見えますが、そうすると12個の数字が揃った時に線だらけの印象になってしまい、目がちかちかします。細かいところですが、縦方向の線と横方向の線の太さを微妙に変えて、違和感なく目に飛び込んでくるようにしています。

ギリシャ数字のVやXの交差する部分も、端と交差する部分での太さを変えています。そうすることで、等幅の線のすっきりとしたデザインでも、違和感なく目に飛び込んでくる書体にしました。

後にいろいろ考えたのですが、これは私個人が先端恐怖症であるからこんな細工をするのかなと気付きました。

プライウッドフレーム                                                        
職人さんの技術                                

続いてプライウッドのフレームについて。初期の試作品です。ガラス面からの立上がりの長さと、枠の厚み(幅)が、ほぼ同じです。プライウッドの構造上、立上がり部分が短いと割れやすいとされているため、従来のものはここの距離が長くとられています。

今回は黒に塗装するため、この距離が長いことで黒の面積が大きくなり、全体的に重たい印象に感じられました。そこで、その距離を2mmと4mm縮めた枠を試作しました。職人さんとの試行錯誤の末、限界に近い4mm縮めた枠の量産化に成功しました。

4mm縮めたタイプは、ガラス面からの立上がりの長さが、枠の厚みよりも短くなり、枠の線がよりはっきりして線を活かした文字盤のデザインと共存するようになりました。

これも一見気付かない部分ですが、プライウッドの職人さんの技術力が盛り込まれた非常に難しい加工です。

次の試作で塗装の重ね塗りを施して枠の硬さを無くし、一見クールな印象でも、生活空間に溶け込む時計になりました。

文字盤には私の名前が書かれていますが、時計が作られていく中で文字盤のデザインにはレムノスのノウハウが盛り込まれていて、プライウッドのフレームは工場の技術力が盛り込まれています。
1人で作ったものではなく、まさに製造にたずさわった全ての人達との合作の時計だと思っています。

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Kazuya Koike

1980年大阪府出身。2003年からデザイン会社に勤務。チーフデザイナーとして顧問クライアントのデザイン、自社製品のデザイン及び開発に携わる。2012年 Doogdesign. 設立。現在 日用品、ステーショナリー、家具、家電などの工業デザインを中心に、企業や地場産業のブランド開発、クリエイティブディレクションなど、国内外のプロジェクトに携わっている。
受賞歴 Good Design Award、iF Design Award、Taiwan Excellence Award 等