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Story Vol.26

プライウッド製品の誕生

2013年ロングライフデザイン賞を受賞した「Plywood Clock」、2004年グッドデザイン賞を受賞したティッシュケース「STOCK」は、長年に渡り人気を誇るロングセラーアイテムです。この2アイテムをデザインした森豊史氏にプライウッドシリーズ誕生の経緯をお話いただきました。


[文: 森豊史]

インテリア市場への参入と
製品づくりの方針変更

西暦2000年、レムノスはコピー商品の氾濫により大きな転機を迎えており、高田博社長はインテリア市場への参入を決断されました。製品づくりの方針を変更し、独自の技術や素材、環境負荷の軽減に配慮した企画を開始したのです。

当時、私は世界的な建築事務所の建築家でしたが、縁あってレムノスのお手伝いをすることとなりました。

プライウッド技術の獲得と
最初のプライウッドクロック

私たちは協力メーカーとプライウッドの技術を獲得し、2000年9月、最初のプライウッドクロックのシリーズを発売しました。
プライウッドを使用したのは、石油化学材料など環境に悪影響のある廃棄物を削減するためです。そのため、接着剤もホルムアルデヒドを含まない植物由来のものを開発しました。

また、プライウッドクロックは合理的なモジュラー設計で、わずかな負荷で少量多品種に対応します。設計には建築設計の思考を導入し、日本の建築空間に適したデザインとしました。

お盆の伝統木工技術を活用した
プライウッド製品の開発

私たちは北陸の「お盆」の伝統木工の技術を活用し、プライウッド製品のシリーズを開発しました。この技法では金型や大きな設備が不要なうえ、衰退する地域産業への社会貢献にもなります。

実用性と美しさを兼ね備えた
ティッシュケース「STOCK」

「STOCK」は、定尺のプラウッド原板の寸法を使い切り、ほとんどゴミが出ない設計です
また、建築空間のモデュロールに従った心地よさと合理性が両立したデザインともなっています。同時に簡易パックのティッシュ2個をストックできる機能性も持たせてあります。

「STOCK」は、2003年東京デザイナーズブロックで発表し、大変好評をいただきました。ニューヨーク近代美術館から「日本的な合理性で美しいデザイン」と評価されたのも思い出です。

このプライウッドシリーズは後に「RIKI CLOCK」の開発に繋がります。

ものづくりの本質に立ち返る、
レムノスの製品開発

当時のレムノスの製品は、表面的な奇妙さや奇抜さを追わず、ものづくりの本質に立ち返ることを目指し環境に良い材料や製造方法、地域産業のサスティナビリティなどをデザインの根幹として開発されています。その結果、流行に流されないロングライフなデザインが生まれるのです。

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Toyoshi Mori

富山県出身。学術研究者、IDアーキテクト(東京大学大月教授による命名。建築思考で学術研究、企業経営、プロダクトを統合デザインするアーキテクトとの意)建築家として郵政省、C+A、有名家具ブランドのデザインワーク。2000年から2008年までは、タカタレムノスの事業計画、製品戦略、プロダクトデザインを行った。2010年から東京都のデザイン事業、現在は三菱UFJ銀行関連のデザイン経営顧問として数社の経営をサポート、株式会社明治+我戸幹男商店と環境材料のコラボ開発を進めている。明治CACAOstyleデザインアワード2023の企画と審査も担当。https://www.meiji.co.jp/sustainability/newaction/cacao/cacaostyle/designaward/