Jp En

Story

Story Vol.25

basin 開発ストーリー by PINTO

僕らPINTOがデザインした basin シリーズが2023年2月に発売されました。basin の前身となる、約10年前に発売された Day To Day Clock との関係性や、ここに辿り着くまでの経緯、デザインに込めた思いなどを紹介したいと思います。


[文:PINTO]

「うつわ」のデザインがきっかけで生まれた時計

2010年当時、僕らがデザインした木製食器のプロトタイプ「白挽物」を目にした高田博社長に「こんな壁掛け時計を作って欲しい」と声をかけてもらった事がきっかけで、前身にあたる Day To Day Clock が生まれました。

今回のシリーズのリニューアルにあたり、今一度「白挽物」を見て、高田博社長が僕らに時計のデザインを依頼してくれた意味を問い直し、浅いうつわを意味する basin(ベイスン)としてリ・デザインに取り組みました。

デザインを見直す中で見い出した、もっと暮らしに寄り添う壁掛け時計の在り方

basinシリーズのデザイン検討は、ホームオフィスのような空間にも似合う、ライン指標の文字盤デザインを追加しようというところからスタートしました。

クールなイメージのライン指標の時計が多い中で、basin ではすっきりとしながらもホームユースに似合う、優しいライン指標を目指し、短かく、先が窄まった形の指標を外周に配置するデザインに辿り着きました。

このライン指標の検討から、文字盤中央の余白を広くとることで、時計の針の示す角度が捉えやすくなるという、それまであまり意識してこなかった、時計の読みやすさを高める方向性に気づき、この考え方に則って数字の指標も合わせてリニューアルすることになりました。

この新しい文字盤のデザインとスリムな形状に見直した木枠により、うつわのような形の魅力を引き上げながら、時計としても針の示す角度が捉えやすいという、美しさと使い勝手の両面で魅力を高める事を目指しました。

Day To Day Clock をデザインした10年前に比べ、今はオンラインで多くのことができるようになったことで、家で過ごす時間が増え、かつ、その過ごし方も多様化しています。
basin では、常にかたわらにあっていいと思える存在感と、読みやすさを兼ね備えることで、これからの時代の暮らし方に寄り添えるのではないかと考えました。

ふちの形を見直したことで引き出されたうつわらしさ

一般的な壁掛け時計に対して、basin の文字盤はうつわ型になっていることで外周の立ち壁(見返し)が一体かつ、すり鉢状になっており、広々としているのが特徴です。
前作でも、このうつわ型の文字盤との連続性やシンプルな形を意識して木枠をデザインしましたが、basin では、より明確な造形の割り切りを加えることで、製造条件を守りながら今までよりもスリムかつ抑揚のある木枠のデザインへと刷新することができました。

この木枠形状の見直しにより、うつわのふちの印象がシャープになり、これにより文字盤中央の空間が引き立つ方向に進化できたのではないかと考えています。

庶民的であり、特別でもある、オリジナルの数字書体

basin number には、前身の Day To Day Clock の際にデザインしたオリジナルの数字書体を踏襲しました。

書体をデザインする上で参考にしたのは、道路標識や生活家電の操作系など、日常生活の中で誰もが目にしたことがあるであろう、丸ゴシックの書体です。丸ゴシックの書体は、気取った印象を与えにくく、すっと生活の中に馴染みやすいのではないかと考えたのがきっかけでした。

その反面、悪く言えばあらゆる場所で使い古され、庶民的で哀愁を感じさせるような書体でもあるのですが、そこにこそ愛着を持ってもらえるヒントがあると考えました。
丸ゴシックのスタイルに則りながら、既存の丸ゴシックに感じる違和感を一つ一つ解消するようにして、オリジナルフォントの骨格をまとめていきました。「親しみが感じられながらも、どこか洗練されている」というように、よい意味で期待を裏切れるような時計を作りたいと思いオリジナルの数字書体を仕上げていきました。

長く気持ちよく使ってもらえる、これからのものの在り方

壁掛け時計はシンプルな機構で壊れにくく、長く使い続けてもらいやすいアイテムでもあります。
だからこそ、デザインが一過性のものであったり、飽きてしまうものでなければ愛着を持って使い続けてもらえるのではないかと思います。

basin では、愛着を持って使い続けてもらえるように、無味乾燥なシンプルさではなく、うつわの形や無垢の木材を用いたからこその、他にない安心感や頼もしさが感じられるシンプルさを目指しました。

また、用いる木材や製造工程についても何が最良かを話し合い、レムノスの時計として初めて国産の栗材を木枠に採用し、国内での地産地消の試みを始めました。小さな一歩かもしれませんが、国産の木材の用途を拡大するとともに、輸入の木材に頼らない事で輸送による環境負荷の低減にもつながるのではないかと考えています。

レムノスの長年培ってきた設計思想に則り、ものづくりの背景に至るまで、どうあるべきか話し合いbasin のデザインが完成しました。
丁寧に考え、辿り着いたデザインですので味わいないがら使い続けて貰えたらありがたいです。

製品ページへ

PINTO

引間孝典(1983年生まれ)と鈴木正義(1982年生まれ)の2人で2008年より活動。それぞれ、家電メーカーとオフィス家具メーカーでインハウスデザイナーとして働くかたわら、美術館什器のデザイン、写真家との出版や展示の企画など、ジャンルを問わず横断的に活動してきた2人によるデザインユニット。共に、2006年日本大学芸術学部デザイン学科インダストリアルデザインコース卒業。引間は、2018年短期留学時にサム・ヘクトに師事、2019年京都造形芸術大学建築デザインコース卒業。鈴木は、2014年留学時にトーマス・アロンソに師事。現在は東京を拠点に活動。各自の受賞歴にiFデザインアワード、red dotデザインアワード、グッドデザイン賞、東京TDC賞入選などがある。